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導入 (Introduction)
BIG3の中でも、最も高重量を扱え、最も背面の筋肉(ポステリオールチェーン)を刺激できる最強の種目、デッドリフト。
しかし同時に、多くのトレーニーやPTがこう敬遠します。
「デッドリフトは腰を壊すからやめておけ」
断言します。
腰を壊すのはデッドリフトという種目が悪いのではなく、あなたの「腹圧」と「ヒップヒンジ」が機能していないからです。
正しく行えば、デッドリフトこそが最強の腰痛予防エクササイズになります。
今回は、なぜ高重量を持っても腰が砕けないのか?その秘密である「腹圧(IAP)」のメカニズムと、絶対に習得すべき「ヒップヒンジ」について、解剖学的・バイオメカニクス的視点で深掘りします。
一般論の否定 (The Antithesis)
ベルトを巻けば安全…ではない!
トレーニングベルト(パワーベルト)を巻くだけで、腰が守られると思っていませんか?
ベルトは「腰骨を物理的に締め付けて固定する」ものではありません。
ベルトの真の役割は、「お腹を膨らませてベルトを内側から押し返し、その反発力で腹圧を高める」ための補助具です。
つまり、自力でお腹を膨らませる(腹圧をかける)技術がない人がベルトを巻いても、ただ苦しいだけで、腰椎への保護効果は半減します。
「ベルトをしているから大丈夫」と過信した瞬間に、怪我は起きます。
まずは、自前の筋肉で「天然のベルト」を作る技術を身につけましょう。
【最重要】メカニズムの徹底解剖 (Deep Dive)
腰を守るエアバッグ「IAP (Intra-Abdominal Pressure)」

脊柱(背骨)は、積み木のような構造をしており、単体では不安定です。
ここに、前から支えるのが「腹腔内圧(IAP)」です。
お腹の中(腹腔)を「風船」だとイメージしてください。
横隔膜(天井)が下がり、骨盤底筋群(床)が受け止め、腹横筋(壁)が締まる。
この3つが同時に収縮することで、風船の中の空気圧が高まります。
パンパンに膨らんだ風船は、上からの重さ(バーベルの負荷)に対して強烈な反発力を持ち、脊柱を内側から支えます。
研究によると、適切なIAPの上昇は、腰椎への圧縮負荷を減らし、脊柱起立筋の活動を助け、脊柱の安定性を劇的に向上させることが分かっています[1][2]。
ヒップヒンジ:股関節を「蝶番(ちょうつがい)」にする
IAPで体幹を一本の棒(剛体)にしたら、次は動きです。
腰痛になる人の動きは、腰から曲がっています(Lumbar flexion)。
正しいデッドリフトは、腰は1ミリも動かさず、股関節(Hip)だけをドアの蝶番(Hinge)のように動かすこと。これがヒップヒンジです。
ハムストリングスと大臀筋がブレーキ役となり、骨盤を前傾位でキープしたまま、上体を倒していく。
IAP × ヒップヒンジ。この2つが揃って初めて、腰への負担は集中せず、負荷がターゲットであるお尻と裏ももに乗るのです。
セルフチェック (Self-Screening)
あなたの「IAPスキル」をチェックしましょう。
- お腹に指を強く押し当てます(おへその横あたり)。
- その指を跳ね返すように、お腹の内側から「フッ!」と圧をかけます。
- 判定:
- お腹が硬くなり、指が押し返された → 合格。IAPが入っています。
- お腹を凹ませてしまった(ドローイン) → 不合格。デッドリフト中にこれをやると腰が折れます。
- お腹だけの力でなく、肩が上がった → 呼吸が浅い証拠。NG。
デッドリフトに必要なのは「ドローイン(凹ませる)」ではなく「ブレーシング(膨らませて固める)」です。
パルク式解決策 (The Solution)
IAPを高め、ヒップヒンジを完成させるためのドリルです。
1. 90/90呼吸(IAPの感覚入力)
- 仰向けになり、足を椅子や壁に乗せて、股関節・膝を90度に曲げます。
- お腹に手を当て、鼻から息を吸って、お腹を360度(前だけでなく横や後ろも)膨らませます。
- 膨らんだ状態をキープしたまま、口から細く長く息を吐きます。
この「膨らんだまま呼吸する」感覚が、高重量を扱う時の基本姿勢です。
2. ドウェル・ヒップヒンジ(棒を使った練習)
- 背中に長い棒(塩ビパイプやモップの柄)を当てます。
- 頭の後ろ・背中(胸椎)・お尻(仙骨)の3点に棒が触れている状態。
- この3点が棒から離れないように、ゆっくりとお辞儀をしていきます。
- もし腰が丸まればお尻が離れ、首が曲がれば頭が離れます。
- ハムストリングスが突っ張るところまで倒し、お尻の力で戻ります。
【有料級】セルフケア・マニュアル (Action Plan)
【デッドリフト直前の「儀式」ルーティン】
バーを握る前に、以下の手順でセットアップしてください。
- 足幅を決める: ジャンプして着地した位置(パワーポジション)。
- ヒップヒンジ: 股関節から折り曲げ、バーを握る。背中は一直線。
- スラック(遊び)を取る: バーを少し引き上げ、カチッと音が鳴るところまでテンションをかける。
- IAP充填: 大きく息を吸い、お腹を膨らませて固める(ブレーシング)。
- レッグプレス: 腰で引くのではなく、足で床を突き放すイメージで挙上開始。
「息を吸って、固めて、床を押す」。このリズムを身体に叩き込みましょう。
よくある質問 (FAQ)
Q1: 怪我が怖いのでハーフデッドリフトでもいいですか?
A: もちろんです。むしろ、ハムストリングスが硬い人が床から引こうとすると、どうしても腰が丸まります。パワーラックのセーフティバーを使って、膝上や膝下から始める「ラックプル(ハーフデッド)」から練習するのが賢明です。
Q2: 腹圧をかけると血圧が上がりそうで怖いです。
A: 確かに血圧は上がりますので、高血圧や心疾患がある方は「バルサルバ法(息を止めていきむ)」は避けてください。息を止めずに「鋭く吐きながら(Shhh!)」行うのが安全です。
Q3: 腰に違和感が出たらどうすればいいですか?
A: 即中止です。「違和感」は「痛み」の前兆です。フォームが崩れているか、重量設定が間違っています。後日、軽い重量でフォーム撮影をして確認してください。
まとめ・行動喚起 (Conclusion & CTA)
デッドリフトは、「重いものを持ち上げる」種目ではありません。
「重いものを持っても、脊柱を微動だにさせない」種目です。
正しいIAPとヒップヒンジを習得すれば、日常生活での「荷物持ち」や「子供の抱っこ」でも腰を痛めることはなくなります。
デッドリフトは、生活の質(QOL)を高めるための最強のライフハックなのです。
「自分のフォームが合っているか怖い」「腹圧のかけ方がわからない」
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▼参考文献
[1] Cholewicki J et al. Intra-abdominal pressure mechanism for stabilizing the lumbar spine. J Biomech. 1999.
[2] Hodges PW et al. Contraction of the abdominal muscles associated with movement of the lower limb. Phys Ther. 1997.
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