ベンチプレスで「肩の前」が痛むあなたへ。違和感を防ぐ『肩甲骨の下制・内転』完全講義

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導入 (Introduction)

男のロマン、ベンチプレス100kg。
しかし、その挑戦の途中で「肩の不調」により離脱するトレーニーが後を絶ちません。

ボトム(バーを胸につけた位置)から切り返す時、肩の前側に鋭い走る感覚。
それでも「筋肉痛だろう」と無理をして続けていませんか?
それは筋肉痛ではなく、関節の中で組織が挟まって悲鳴を上げているサイン(インピンジメント)かもしれません。

ベンチプレスで肩を痛める理由はシンプル。
「肩甲骨が固定できておらず、肩が前に出ているから」です。

今回は、理学療法士の視点から、肩関節を守りつつ大胸筋に最大限の刺激を入れるための「肩甲骨のセッティング」を徹底解説します。

一般論の否定 (The Antithesis)

「背中をつけろ」というアドバイスの落とし穴

フィットネスクラブの初心者講習で「ベンチ台に背中をぴったりつけましょう」と教わることがありますが、これは高重量を扱う上では注意が必要なアドバイスです。

背中(肩甲骨)がフラットな状態でバーベルを下ろすと、構造上、肩関節は内巻き(内旋)になりやすく、上腕骨頭が前方に動きやすくなります。
この状態で重りを受けると、肩の前方の組織(二頭筋長頭腱や関節唇)に強い剪断力がかかるリスクがあります。

安全にプレスするためには、意図的に「ブリッジ(アーチ)」を作り、肩甲骨を寄せて、肩をシートに安定させる必要があるのです。

【最重要】メカニズムの徹底解剖 (Deep Dive)

インピンジメントのメカニズム

図解

なぜ肩に負担がかかるのか?
その要因の一つとして、肩甲骨の屋根(肩峰)と、腕の骨(上腕骨)の間の「棘上筋(きょくじょうきん)」や「滑液包」の挟み込みが考えられます。

ベンチプレスの動作中、脇を開きすぎたり、肩がすくんだり(肩甲骨が挙上)すると、この「屋根と骨の隙間(第2肩関節)」が狭くなります。
その状態でバーを押し上げると、間の組織が反復して圧迫されます。これがインピンジメントのリスクです。

これを防ぐ方法の一つが、「肩甲骨の下制(かせい)・内転(ないてん)」です。
肩甲骨を下げて(下制)、背骨に寄せる(内転)。
こうすることで、相対的に胸の位置が高くなり、肩は後ろに引かれます。
結果、肩峰下のスペースが確保され、物理的なストレスが減ります。

レッグドライブの真の意味

「足を使う」のは、単に踏ん張るためだけではありません。
足で床を頭方向へ蹴ることで、その力がシートとの摩擦を利用して、肩甲骨をより深くシートに固定するためにあるのです。

セルフチェック (Self-Screening)

あなたのフォームが「肩に負担をかけるフォーム」になっていないかチェックします。

  1. エア・ベンチプレス(今の場所でやってみましょう)。
  2. 「前ならえ」をして、そこから肘を引いていきます。
  3. 見立て:
    • 肘を引いた時、肩が耳に近づく(すくむ)要注意。僧帽筋上部が働きすぎています。
    • 肘を引いた時、肩が前に飛び出る要注意。胸郭の柔軟性が不足しています。
    • 肘を引いた時、胸が天井に向かって突き出るOK。正しい連動です。

パルク式解決策 (The Solution)

肩を守る鉄壁のフォームを作る3ステップです。

Step 1. 肩甲骨をポケットにしまう(下制)

ベンチに寝る前に、まず立った状態で「気をつけ」をし、肩を思い切り下げます。
「ズボンの後ろポケットに肩甲骨をねじ込む」イメージです。この位置をキープしたまま寝転がります。

Step 2. バーを取りに行くときは「迎えに行かない」

ラックアップ(バーを外す時)で、せっかく寄せた肩甲骨が開いてしまう人が多いです。
腕を伸ばしてバーを取りに行くのではなく、「体をシートに沈み込ませる」つもりで肘を伸ばしてください。
肩甲骨の寄せを解かないことが重要です。

Step 3. みぞおちに下ろす(・字軌道)

バーを乳首のラインより上(首側)に下ろすと、脇が90度近く開き、インピンジメントのリスクが高まります。
少し脇を閉じ(60度〜75度)、みぞおちの辺り(剣状突起)に向かって下ろしてください。
軌道は直線ではなく、少し足側へ弧を描く(・字)ようになります。

【有料級】セルフケア・マニュアル (Action Plan)

【ソラシック・エクステンション(胸椎伸展)】

ベンチプレスでブリッジを作るためには、腰ではなく「胸(胸椎)」の柔軟性が不可欠です。

  1. ストレッチポール(なければバスタオルを丸めたもの)を、肩甲骨の下に横向きに入れます。
  2. 仰向けに寝て、頭を床につけます。
  3. 両手を万歳し、胸を開きます。
  4. この状態で深呼吸を1分間。
    胸がドーム状に広がり、肋骨の動きが良くなります。トレ前の必須種目です。

よくある質問 (FAQ)

Q1: 手幅(グリップ)はどれくらいがいいですか?
A: 個人差ありますが、ボトムで「前腕が床と垂直」になる幅が基本です。広すぎると肩への負担が増え、狭すぎると上腕三頭筋メインになります。

Q2: ダンベルプレスの方が肩に優しいですか?
A: はい。バーベルと違い、手首の角度や軌道を微調整できるため、肩へのストレスを逃しやすいです。違和感がある時はダンベルに切り替えるのも賢い選択です。

Q3: 痛くてもやっていたら治りますか?
A: インピンジメントは「物理的な接触」なので、我慢して続けても改善は難しいでしょう。痛みをこらえずに、フォームを見直すか、休む勇気を持ってください。

まとめ・行動喚起 (Conclusion & CTA)

「胸に効かせる」とは、ただ重りを動かすことではありません。
「肩という支点を安定させ、大胸筋というモーターだけで動かす」技術です。

肩の痛みは、あなたのフォームに対する体からのメッセージです。
そのサインを無視せず、正しい解剖学に基づいたフォームにアップデートしましょう。
そうすれば、100kgは通過点になります。

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▼参考文献
[1] Escamilla RF et al. Biomechanics of the bench press. Med Sci Sports Exerc. 2000.
[2] Green CM et al. The role of the scapula in the bench press. Strength Cond J. 2007.

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