スクワットは「深いほど偉い」のか?フルスクワットで股関節を壊す前に知っておくべき解剖学

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導入 (Introduction)

トレーニーの間で永遠のテーマである「スクワットの深さ」論争。

「パラレル(太ももが床と平行)で甘えるな、フル(完全にしゃがみ込む)まで落とせ!」
「いや、深くしゃがむと腰が丸まるから危険だ」

SNSでは様々な意見が飛び交っていますが、理学療法士としての結論を最初に言います。
「万人に合う正解はない。あなたの『骨の形』が深さを決める」

特に、日本人は欧米人に比べて股関節の形状がフルスクワットに向いていないケースが多いです。
無理に深くしゃがむことで、筋肉を鍛えるどころか股関節の関節唇(かんせつしん)を破壊している可能性があります。

今回は、根性論ではなく「解剖学」デ、あなたにとっての「適正なスクワットの深さ」を定義します。

一般論の否定 (The Antithesis)

「フルスクワット=可動域最大=筋肥大最大」の罠

確かに、可動域を大きく取ることは筋肥大の原則です。大臀筋は深くしゃがむほどストレッチされ、強い刺激が入ります。
しかし、これには「関節が正しく噛み合っているなら」という前提条件がつきます。

もし、骨と骨がぶつかっている(ロックしている)状態で、さらに重りで上からプレスしたらどうなるでしょうか?
テコの原理で、支点となっている関節そのものが破壊されます。

多くの人が感じる「股関節の詰まり感」。
これは「硬いから」ではなく「ぶつかっているから」かもしれません。
ぶつかっている骨を気合いで押し込もうとしても、骨は曲がりません。軟骨が削れるだけです。

【最重要】メカニズムの徹底解剖 (Deep Dive)

恐怖の「FAI(大腿骨寛骨臼インピンジメント)」

図解

この図を見てください。これが股関節の内部で起きている衝突事故です。

  • Cam(カム)型: 大腿骨の首の部分(頚部)が太く、出っ張っているタイプ。
  • Pincer(ピンサー)型: 骨盤の受け皿(寛骨臼)が深く被さりすぎているタイプ。

これらの骨形状を持つ人が深くしゃがみ込むと、大腿骨のネックと骨盤の縁(リム)がガチンと衝突します。
これをFAI(Femoroacetabular Impingement:股関節インピンジメント)と呼びます。

この衝突が繰り返されると、間にある「関節唇(パッキンの役割をする軟骨)」が損傷し、将来的に変形性股関節症の原因になります。
「深くしゃがむと股関節の前が痛い・詰まる」という人は、このFAIの可能性が高いです。
この場合、深くしゃがむことはトレーニングではなく、自傷行為です。

セルフチェック (Self-Screening)

あなたの股関節が、構造的にどこまで曲げられるか(屈曲可動域)をチェックする「フェイバー(FABER)テスト」の応用版です。

  1. 仰向けに寝ます。
  2. 片膝を抱え込み、胸に近づけていきます(屈曲)。
  3. 判定:
    • 膝が胸に楽につく → フルスクワット可能な骨格の可能性大。
    • 胸の手前で「カチッ」とロックがかかる・詰まる感覚がある → 骨が衝突しています。その角度があなたの限界(ボトムポジション)です。それ以上しゃがんではいけません。

また、「Butt Wink(バットウィンク)」も重要なサインです。
しゃがんでいく途中で、骨盤が後傾してお尻が丸まってしまう現象。
これは股関節の屈曲限界を超えたため、腰椎を丸めて代償している証拠です。腰椎ヘルニア一直線なので即修正が必要です。

パルク式解決策 (The Solution)

骨格に合った「自分だけのボトムポジション」を見つけ、そこで最強の負荷をかける戦略です。

1. 「パラレル」でも効果は十分

研究によると、パラレルスクワット(大腿部が床と平行)とフルスクワットでは、大腿四頭筋の筋活動に大きな差はないというデータもあります。
無理なフルより、「パラレルで重量を扱う」方が、関節を守りながら高強度のトレーニングが可能です。

2. スタンス幅を変える(ワイドスタンス)

足幅を広げてつま先を外に向ける(ワイドスクワット)と、大腿骨の向きが変わり、骨盤との衝突を回避できることがあります。
「ナロー(狭い足幅)だと詰まるけど、ワイドなら深くしゃがめる」という人は、ワイドが正解のフォームです。

3. ヒップヒンジの習得

股関節を正しく「引き込む」動き(ヒップヒンジ)ができていないと、早い段階で骨が衝突します。お尻を後ろに引く意識を持つことで、スペースを確保できます。

【有料級】セルフケア・マニュアル (Action Plan)

【関節包リリース(四つ這いゆらゆら)】

詰まり感を解消し、可動域を広げるモビリティドリルです。

  1. 四つ這いになります。
  2. 膝を肩幅より広く開きます(カエルの足のように)。
  3. 背中を反らしたまま、お尻をかかとの方に引いていきます。
  4. 股関節の付け根に心地よいストレッチ感があるところでストップ。
  5. そこで小さく前後にお尻を揺らします。30秒間。

これを行うことで、股関節の後方の組織(後方関節包)が緩み、骨頭がスムーズにハマり込むようになります。スクワット前のアップに最適です。

よくある質問 (FAQ)

Q1: 膝がつま先より前に出てはいけないと言われましたが?
A: 古い定説です。無理に膝を出さないようにしてお尻を引くと、腰への負担が増大します。今のバイオメカニクスでは、「膝はつま先より前に出てもOK(ただしニーインはNG)」が常識です。自然にしゃがんでください。

Q2: ベルトは必須ですか?
A: 腹圧を高める感覚を掴むために、初心者こそ使うべきです。怪我予防だけでなく、体幹が安定することで挙上重量も上がります。

Q3: 詰まり感があるけど、どうしてもフルでやりたいです。
A: 踵(かかと)の下にプレートを敷くか、リフティングシューズ(踵が高い靴)を履いてください。足首の背屈角度を補うことで、上体が起き、股関節の屈曲角度が浅くなるため、詰まり感が軽減する場合があります。

まとめ・行動喚起 (Conclusion & CTA)

「憧れのボディビルダーがフルスクワットをしているから」
それは、その人の骨格がたまたまそれに適していただけかもしれません。

トレーニングの目的は、怪我をすることではなく、体を強くすることです。
自分の骨格を知り、自分に合った深さを見つけることこそが、上級者への第一歩です。

「自分のスクワットフォームが合っているかわからない」「股関節の詰まりの原因を知りたい」
そんなトレーニーの方は、当院のフォームチェック・コンディショニングをご利用ください。
構造的な限界と、改善できるポイントを明確にお伝えします。

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